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ごあいさつ

ご挨拶

BATONプロジェクトのホームページをご訪問いただきありがとうございます。

認知症は現在日本で500万人以上、世界では5,000万人以上が罹患していると推計され、今後社会の高齢化と共にその数は更に増えていくと考えられているため、その対策は我が国のみならず世界的に喫緊の課題となっています。認知症の根本的な治療法や有効な予防法を開発していくためには、多数の集団の中から、脳に認知症の原因となる病変がある人を正確に同定し、そのような病変のない方と区別(層別化)していく必要があります。しかし、これには現状PET検査や髄液検査といった高額・あるいは侵襲性が高い方法しかないため、コストや安全性、簡便性等の面で優れた血液検査による層別化システムの開発が強く求められています。

私達の研究グループは、これまで、血液の特定の物質(血液バイオマーカー)を測定することにより、脳の病変(例えばアルツハイマー病に特徴的なアミロイドやタウの蓄積)を捉える方法の開発に携わってきました。本研究プロジェクトでは、複数の血液バイオマーカーを組み合わせて、健康な高齢者の認知症発症リスクの推定や、もの忘れの症状のある方の認知症への進行予測、認知症のタイプの推定等を行える統合的な層別化システムの開発を目指しています。本研究プロジェクトは国内の複数の施設の共同研究で、日本医療研究開発機構(AMED)の支援を受け、2019年11月から4年半の計画で行われます。本研究プロジェクトの目的達成には、認知症の患者様や健康な高齢者の方々のご協力、認知症医療や研究に携わる方々のご協力が必要になります。何卒ご支援の程、お願い申し上げます。

BATONの意味

本プロジェクトは血液検査でアミロイド、タウ、その他の神経病理学的な変化を捉えるバイオマーカーを開発して統合していく研究 (Blood-based Amyloid, Tau and Other Neuropathological Biomarkers Project) を略してBATONと命名しました。本プロジェクトは、例えば治療薬の開発のように「直接ゴールを決める」研究ではありませんが、認知症の有効な治療法や予防法の開発を加速するために必要不可欠な研究です。また、安全、簡便、安価な方法で認知症の診断や認知症リスクの推定に役立つ情報を捉え、認知症診療の現場や一般高齢者にお届けできるようにすることも目指しています。

このように、認知症研究者、製薬企業、臨床診療医、一般高齢者の皆様等に「バトンを繋ぐ」という意味で、シンボルをバトンパスのイメージにしました。また陸上競技のリレーのように、日本が誇る技術とチームワークで世界にアピールし、人類の医療に貢献していくという意味も込められてあります。

研究代表者
国立長寿医療研究センター 研究所
バイオマーカー研究部 部長 中村昭範